2014年8月1日金曜日

仙台海岸に戻って来たタヌキの食べ物

 2011年の津波で海岸から数km内陸まで浸水した仙台海岸にタヌキが戻ってきました!

 タヌキの糞を収集し、何がその中に含まれているのかを分析したところ、「タヌキとその餌となる生きもののつながりが回復しつつあること」、「餌となる生きものは海岸で再生する植物やそれに依存する昆虫から構成されていること」がわかってきました。

 餌となる生きものの種組成などの詳細については、以下の速報をご覧ください(pdfファイル [0.5MB] がダウンロードされます。)


高槻 (2014) 仙台海岸に戻って来たタヌキの食べ物.

Y.H.

2014年7月14日月曜日

昆虫班からの報告 ―ヤツが来た!―

 2012年8月の記事に、サイト内の水たまりが乾いたり溜まったりを繰り返しているらしいという話を書きました。この水たまりは変化を続け、これまでさまざまな昆虫が記録されています。今年の様子を見に行ってみました。

水辺の植物におおわれた水たまり(2014年7月2日撮影, 以下同じ)


 2012年までは、植物はまだ多くありませんでした。2013年中に画期的に増えたようで、今年は写真のように、水面がよく見えないほど茂っています。草にキイトトンボが止まっていました。羽化後あまり時間が経っていないようなので、この水たまりで成長したのでしょう。モニタリングサイトのニューフェースです。

 そして水の中には、何種類かのヤゴ(トンボの幼虫)、ハイイロゲンゴロウの幼虫、コミズムシの仲間などに混じって――いやむしろそれらをしのぐ数の生き物がいました。ドジョウの幼魚です。ついに、魚類が来ました。いったいどこからどうやって来たのでしょうか? ここが別の水たまりとつながっているところは見たことがありません。

まだ完全には色づいていないキイトトンボ

ドジョウの幼魚。在来種か外来種かは今後の宿題

 ドジョウは、下のような小さい水たまりにもいました。上の水たまりとは100mくらい離れています。こちらではハラビロトンボが発生していました。このトンボもニューフェースです。

広い草地の中の水たまり。ここにもドジョウが

ハラビロトンボの♂。♀は黄褐色

Y.I.


2014年7月7日月曜日

昆虫班からの報告 ―変化する環境―

 夏を迎えました。モニタリングサイトはみずみずしい緑におおわれて、目と心に染み入ります。ちょうどテリハノイバラが満開で、ノハナショウブやカワラナデシコも咲いていました。

木漏れ日の差す林床にいろいろな広葉樹が葉を広げている(2014年7月2日撮影, 以下同じ)

咲き始めのカワラナデシコ

 津波の作用で拡大し、被災域の特徴の一つになっていた砂地の裸地ですが、モニタリングサイトでは植物の進入につれて縮小してきました。春から秋まで裸地に無数にいたコニワハンミョウも、今回は1頭見ただけです。草が進入してきた砂地には、アリバチ類やアリガタバチ類が歩いていました。これらのハチは他の昆虫に寄生して育ちます。

 松林の林床にも落ち葉が積もって空き地がずいぶん減りました。アリジゴクも住宅難になってきたようです(下の写真)。この巣の主はクロコウスバカゲロウの幼虫でした。

クロコウスバカゲロウ幼虫の巣

 湿地のまわりを囲むイネ科植物の草地には、たくさんのハマベアワフキがいました。どうしても背中を見せてくれません。

ハマベアワフキ。近づくと向こう側に回り込んでしまう

 ヨシ原も草原も厚みと密度を増し、もう分け入るのも簡単ではありませんが、そこにはたくさんの生き物が抱かれています。環境が変化していく過程で、さらに多くの生き物を育てます。改変が進む沿岸部で孤島のように残ったモニタリングサイトを、生き物の聖域として、どうにか残したいものです。

Y.I.


2014年6月19日木曜日

「ふるさとの海辺は生きている: ビーチクリーンアップとネイチャークルージング」を開催

6月13日、「ふるさとの海辺は生きている: ビーチクリーンアップとネイチャークルージング」を、仙台市宮城野区岡田の砂浜海岸で実施しました。参加者は76名で、市民や大学・市民団体・行政機関の皆さんなど、さまざまな立場の方々にご参集いただきました。
午前中は、波打ち際に近い砂浜で人工漂着物を拾い集める活動。南北およそ1.9kmにおよぶ砂浜を6区画に分けて、グループごとに、打ち上げられた人工ゴミの種類や出所、大震災の痕跡、痛手から再生しつつ生態系の様子なども話題にしながら、交流を深めつつ活動しました。
写真1 岡田新浜・南蒲生海岸(南北およそ1.9km)で実施されたビーチクリーンアップ. 青空の下, 潮風と砂の感触, ちいさな生きものの存在を楽しみながらの活動となった.
写真2 拾い集めた人工漂着物の種類はさまざま. しかも, 4トントラック5台分にもなった(撮影: 国土交通省仙台河川国道事務所).

午後は、内陸側に位置する砂丘域を散策し、よみがえりつつある自然の実態や、人と自然のかかわりについて学びあいました。先ずは、新浜復興の会の皆さんが、「先達が建てた愛林碑」にご案内下さり、「海辺で過ごした往事の思い出や、恵み多い海岸林の大切さ」をお話しされました。続いて、一見したところ荒れ地のようになった海岸林跡地を散策して、力強く再生している「森の仲間たち」に触れ、それぞれの「いのちを繋ぐための、しなやかな工夫」を学びました。
写真3 長い時間をかけて, 海岸林を築いてきた新浜集落の皆さんが建てた愛林碑. 森づくりの苦労とそれを成し遂げた誇り, 恵み多い森への感謝, そしてふるさとの海辺への愛着が綴られ, その想いは今も受け継がれていた.
写真4 大津波が攪乱した砂丘では, ふるさとの海辺を代表するハマヒルガオやコウボウシバ, ウンラン, ハマ二ガナといった砂草が,「みどりのカーペット」を織りなすまでに復興していた.

前夜までの激しい雨が止み、深い朝霧の中から広がり始めたキラキラと輝く海、砂浜、空、いのち ・・・・・・ 「ふるさとの海辺は生きている!」 この想いを分かち合えた、楽しいひとときになりました。

活動を支えていただいた新浜復興の会、国土交通省東北地方整備局仙台河川国道事務所、深沼・二の倉海岸復旧工事連絡協議会の皆さまに心から感謝申し上げます。


Y.H.


主催: 南蒲生/砂浜海岸エコトーンモニタリングネットワーク
緑を守り育てる宮城県連絡会議
北の里浜 花のかけはしネットワーク
公益財団法人自然保護助成基金第24期(2013年度) プロ・ナトゥーラ・ファンド助成事業


2014年1月31日金曜日

「第4回・フォーラム 仙台湾/海岸エコトーンの復興を考える」を開催

 2014年1月25日(土)、標記フォーラムを東北学院大学土樋キャンパス 押川記念ホール(仙台市青葉区)で開催しました。
 今回のテーマは、「ふるさとの浜辺復興、こうしたい」を分かち合う。・・・・・ 東日本大震災から3度目となった2013年の成長・繁殖期、仙台湾岸の砂浜海岸エコトーンでは、多様な生物・生態系が予想を上回る速さと広がりで、自律的な再生を果たしました。「ふるさとの自然・浜辺景観」は着実によみがえっています。一方、おそらく史上稀にみる高スピードと大面積で進行する復興工事の裸地造成、客土・盛土とのかかわりの中で、「再生途上にある、ふるさとの自然をいかに未来につなぐのか」という根源的課題が、依然として置き去りにされています。フォーラムでは、フィールドに根をおろして活動してきた専門家と市民団体が調査結果や取り組み、方策を発表し、続いて参加者間で意見やアイデアを交換しました。

 参加者は、北海道や徳島、島根といった遠方からお越し下さった方々を含めて、92名に達しました。市民団体や行政・報道機関の皆さん、環境調査会社や大学の専門家など、立場も多様です。
 フォーラムでは先ず、鈴木孝男(東北大学大学院生命科学研究科)さんが、長年の野外調査を踏まえて、「仙台湾南部海岸の自然環境特性と大震災後の変遷」について、包括的なレクチャーを行いました。続いて、原慶太郎(東京情報大)さんらが景観生態学の視点から、中嶋順一(仙台湾の水鳥を守る会)さんが保護・保全施策の実態という切り口から、鈴木玲(手稲さと川探検隊・雪印種苗)さんらが砂丘生態系復元活動の経験から、富田瑞樹(東京情報大学)さんらがエコトーンモニタリングの結果から、そして平吹(東北学院大学)が行政・市民協働の視点から、それぞれの活動経過と「こうしたい」を提示しました。また、ピロティでは、ポスターやパンフレットの展示がなされました。
 討論・総括のセッションでは、あらかじめカードに記入いただいた疑問や意見、活動事例、アイデアをもとに交流が図られました。紙面に綴られた視点や話題は多岐にわたり、モデレーターを務めていただいた熊谷佳二(蒲生を守る会)さん・原慶太郎さんはご苦労なさったようですが、突きつけられた課題の大きさを改めて実感しつつ、新しい知識や手だて、人との出会いが生まれたひとときとなりました。

 ご参加いただいた皆さま、ご後援・ご支援いただいた諸団体・諸機関に、心から御礼申し上げます。

Y.H.

第4回フォーラムの様子(2014年1月25日)

2013年7月16日火曜日

南蒲生モニタリングサイト内の湿地周辺の変化

 定点撮影はその場の変化を表すのに有効な手段ですが,いざ実行するとなると撮影機器の設置方法や電源,天候などの諸条件を考え始めてしまいます.「なかなか難しいな・・・」などと考えているうちに時間だけが過ぎていき,せっかくのチャンスを逃してしまうこともしばしばです.そもそもの目的は変化の記録なのですから,細かいことを気にせずに実行するのが大事かもしれません.

 今回は幸いにも,ほぼ同じ場所から同じ方角を撮影した写真が3枚ほどありましたので,ご紹介します.定点撮影を意図してはいませんでしたので,撮影間隔は一定ではなく,撮影範囲も少しずれています.

震災後2ヶ月が経過したサイト内の湿地周辺(2011年5月14日)
震災から2ヶ月が経過した南蒲生モニタリングサイト内の湿地の様子です.貞山堀の堤防から西側(内陸側)を撮影しました.写真中央のヨシが芽吹いているあたりは震災前から湿地だった場所ですが,その奥はクロマツ林でした.津波によって倒されたクロマツの幹が目立ちます.その合間には芽吹きはじめた広葉樹も見えます.写真手前の左側にはまだ緑色のクロマツの落枝が,写真中央右側のクロマツ樹冠下にヤダケが確認できます(タケ・ササ類は浸水後に葉が変色したものが多いようです).

震災後3ヶ月が経過したサイト内の湿地周辺(2011年6月10日)
 さらに1か月後の様子です.ヨシが成長し,倒木クロマツの合間に見える広葉樹の緑が増えています.クロマツの落枝は枯れ,ヤダケが展葉し始めているように見えます.風雨による浸食のせいか,キャタピラ跡は消えました.

震災後2年4ヶ月が経過したサイト内の湿地周辺(2013年7月7日)
 ひとつ前の写真から2年とひと月が経過しました.ヨシを始めとする様々な抽水植物が繁茂し,クロマツの倒木は広葉樹に覆われて確認できなくなりました(広葉樹にはハリエンジュも含まれますが).手前にはクロマツ実生をはじめ複数種の植物が新たに定着していることが分かります.ヤダケは青々と茂る一方で,一部のクロマツ林冠木は立ち枯れているようです.

 ほぼ同じ場所から何度か撮影しておくだけで,植生の変化がある程度わかりますね.機会があったら,サイト内で撮影された写真を集めて,様々な場所の時間的変化を確認するのもよさそうです・・・.


 現地の皆さんが主体となって様々な分類群の生物相モニタリングを進めているところですが,絶滅の恐れがある生物として環境省や宮城県のレッドデータブックに掲載されている種がサイト内外で複数確認されています.また,猛禽類がこれらの環境を利用していることも明らかになっており,その場を保全することの重要性はますます高まってきているようです.仙台平野沿岸部にわずかに残った海岸林や後背湿地などの様々な生態系が連続していることも,その価値を高めているのかもしれません.

 地域の皆さんの生活を守ることは重要です.災害に対して安全・安心であることはもちろん大事ですが,安寧・幸福な生活には多様な生物・生態系も欠かせないように思えてなりません.

M.T.

撮影場所:

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2013年5月2日木曜日

懐かしい出会い


鳥類班です。
月1回実施している鳥類調査を4月28日の早朝に行ないました。

倒れたままのヤマザクラが林内のあちこちで花をつけていました。
開花したヤマザクラ(2013年4月28日)

鳥の世界では、今頃はちょうど春の渡りの最中にあたります。
東南アジア方面など暖かい地方で冬越ししていた鳥たちは、子育てのため山地などへ移動していく際に低地の林に寄り道していくことが多いので、海岸林でも思いがけない鳥を見かけてちょっと得した気分になったりする時期です。
でも、この日は夜明け前からの強風が災いしたのか、楽しみにしていた渡り鳥のさえずりも聞こえず、鳥の姿も少なめでした。

そんな中、とても嬉しくなる出会いがありました。
クロジ(2013年4月28日)

ホオジロの仲間の小鳥、クロジです。
被災後初めて海岸林で出会うことができました。

クロジは林床にササが生い茂る針広混交林で繁殖します(茂田1995)。宮城県では山地のブナ林などで夏にさえずりを耳にしますし、つい最近改訂された県レッドリストにも掲載されていないので、そんなに珍しい鳥とは言えないのかもしれません。しかし、Brazil (2009)や日本鳥学会(2012)などを見ると、クロジの繁殖地は北日本のほかサハリン、カムチャツカ半島南部から千島列島にかけての非常に狭い範囲だけで、越冬地も中部日本から琉球列島までの間に限られるようです。その点では日本が誇る貴重な鳥のひとつと言えるのではないでしょうか。

東日本大震災より前にモニタリングサイトの近くで私が行なっていた調査では、クロジは春と秋の渡りの時期にたくさん現われる種でしたが、常緑樹の薄暗い茂みや薮を好むため、それらが津波ですっかり流されてしまってからは、心配したとおり全く見ることができなくなってしまいました。私にとって、在りし日の海岸林の記憶と最も強く結びついている鳥です。
近ごろは広葉樹の低木が少しづつ繁茂してきたせいか、被災後に調査を始めた頃に比べ、現われる鳥の種類や数がわずかながら変化している気がします。鳥たちが林を見る目も少し変わってきたのかもしれません。

さて、茂みを好むクロジがどんなところで見られたかというと・・・
津波で倒されたクロマツの樹冠や根から構成される,クロジが利用した環境(2013年4月28日)

こんなところです。
大きなクロマツが押し倒されて根が剥き出しになり、そこに大小のクロマツの幹や樹冠などが引っかかって堆積し、あちこちに隙間ができています。その隙間を3羽のクロジと2羽のアオジが盛んに出入りしていました。
この場所では、やはり被災後見かけなくなっていたシロハラ(先月にようやく発見)の他、ウグイスやミソサザイなど、薮や薄暗い茂みを好む鳥がよく目につきます。こうした鳥たちにとって、茂みが大きく育つまで、それに代わる拠り所となっているようです。

低木が繁茂してきたとは言え、その多くはニセアカシアなので、手放しで喜ぶわけにもいきませんが、いずれ様々な落葉樹や常緑樹が生長するようになると、かつての海岸林で見られていた鳥たちが他にも戻ってきそうです。その日が遠くないといいのですが・・・。
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鳥以外では、こんなものを見つけました。
何者かによる食痕(2013年4月28日)
サクラの枝の食痕とスケールのボールペン(2013年4月28日)



枯れたサクラの枝を何かが齧ったようです。ネズミにしては齧り方が大きいような・・・。
お分かりの方がいらしたらぜひお教えください。

H.S.